「ドラマーではなくひとりの音楽家のデビュー作品」池田 隆(ライター)
「漆黒の森。群れる鳥。うねる鼓動。」福島 剛(ピアニスト)
「罠を仕掛けて、自ら罠に嵌る男の美しすぎるGroove」
上條 貴史(ベーシスト/コンポーザー)
『 ツキノウタ 』
Hiroaki Machida
1. ムゲンダイ
2. ツキノサバク
3. z7
4. ムーンチャイルド
5. B-K
6. 1mmノアメ
全6曲 ¥750
(アルバム購入価格)
ARD-001
町田浩明ソロアルバム『ツキノウタ』
11/28の配信開始と同時にCDでの発売が決定しました!
¥1,000-(税込)ARC-001
お求めはライヴ会場にて、
近日中にAmazonでの販売も開始致します。
※収録されている楽曲は配信のものと同一の内容です
ツキノサバク PV
参加メンバー
track2/梶川 朋希(g)
track2.5/野田博(b)
track2.3.4/薫風(fl)
track2.4/田中美和(pf)
track2.4/志村実穂(sax)
track1.4/南たけし(ds)
track1.2.3.4.5/清松 一虎(per)
作編曲/ds/wavedrum/spd-sx/ipod/bass/pf/key/mix/
Produced by 町田浩明
Copyright 2012 Asymptote Records All Rights Reserved
『 ツキノウタ 』 Hiroaki Machida 解説:池田 隆
ドラマー町田浩明氏のソロアルバム「ツキノウタ」。意外にもこれが町田氏の初のソロ作品である。Asymptoteの1stアルバムでの町田氏のプレイを聴いていたので、所謂ドラマーのソロアルバムとは異なる趣きになるだろうとは思っていたが、これが期待以上の作品だった。ジャコ・パストリアスのソロアルバム「Word of Mouth」を聴いた時と似た感じは、町田氏が単なるドラマーに留まらず音楽家としての才能に満ちていることの証明であろう。在籍するバンド「TKB」にも数多くの作品を提供し、個人名義でもCM音楽や映像作品の音楽の作曲をしてきたキャリアを持つ彼にとっては当たり前なのかもしれないが、あれだけの超絶テクニックを持つドラマーが「ドラム!ドラム!」と言わずに作曲家、編曲家の視点を持ってこういう幅広い音楽性をもつ作品を作ってしまうのは大変興味深い。その自己完結しない姿勢はゲストミュージシャンの起用にも見られ、個々のプレイヤーの長所を生かすアレンジは作品のクオリティを高める要因の一つとなっている。そして幻想的でありながらどこかほのぼのとするアートワークはアルトサックスで参加している志村実穂嬢の作品、こちらも素晴らしい作品なので是非じっくりご覧になっていただきたい。しかしそれにしても一度この「町田浩明オールスターズ」でのライヴを観てみたいものだ。今後の町田氏の活躍に期待。
ムゲンダイ
ソロアルバムの冒頭を飾るこの楽曲は、町田氏が近年模索している音楽の方向性を凝縮した内容となっている。打楽器ユニット『Asymptote』にも共通する方向性を更に押し進め、ループのフレーズ以外は全て人力。故に所謂打ち込みでは絶対に表現できない緊張感に満ちあふれている。ドラマーのソロ作品なのにゲストにパーカッショニストとドラマーを起用するあたり、決して自己完結せず作品性を重視する町田氏の音楽に対する姿勢が明確になっていて興味深い。
ツキノサバク
今までにも『月』というモチーフで何曲か作品を残している町田氏だが、この曲は彼が在籍するTKBで演奏されていた作品(タイトルは漢字表記の『月の砂漠』)へのオマージュともいうべき作品。タイトルには砂漠とあるがなんとも楽しげな雰囲気はまるで月面を散歩しているよう。ゲスト参加のピアノ、サックス、フルートは3人とも女性プレイヤーで、女性らしい柔らかい音色とフレーズが作品に花を添えている。オープニングとエンディングのギターはTKBのギタリスト梶川朋希氏。
z7
一番難産だったというこの曲は今回のアルバムの中で筆者イチオシ。元々は朝起きて急にピアノが弾きたくなり、即興で演奏~録音したトラックにダビングを重ねて完成させた作品との事。フルートがフューチャーされているという事もあってか、エリック・ドルフィーの「Out To Lunch」を彷彿とさせる雰囲気で、もしドルフィーが生きていたらこの方向を模索したのではと考えを巡らせてしまった。町田氏の音楽性の幅の広さを感じさせる作品である。
ムーンチャイルド
この曲も『月』がモチーフの作品。タイトル通り月の子供のイメージでとても可愛らしい楽曲に仕上がっている。町田氏へのインタビューの際に彼が「いつか月に行ってみたいんですよ」と言っていたのだが、その時の『僕は本当に行けると思っているので』という雰囲気がとても印象的であった。その印象もあってか、この作品を聴いていると町田氏は彼自身の月の記憶を元に作曲をしているのではないかとの錯覚に陥ってしまう。そう彼は既に月に行った事があるのだ。
B-K
iPodアプリのRemixDJのループパターンを軸にしたベーシスト野田博氏とのデュオ作品。町田氏と野田氏はTKB以前からの長年のコンビで、この曲も自由奔放なプレイのようだがそのコンビネーションは素晴らしいの一言。このリズムセクションと一緒に演奏してみたいと思うプレイヤーは多いだろう。ちなみにタイトルのB-KはRemixDJがしゃべっている「BASS KICK」というフレーズから。
1mmノアメ
今回のアルバムで唯一町田氏がひとりで演奏している作品。ドラムだけではなくiPodアプリのAlchemy、StarMelody、ThumbJam、VoiceSynthを使用しそれらも全て町田氏が演奏していて、彼の世界観が凝縮された内容となっている。ソロアルバムのラストを飾るに相応しい作品である。
解説:池田 隆